【本記事の根拠となる通知一覧】
- 📄 保医発0601第1号:「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について(通知)」の一部改正について
- 📄 保医発0601第2号:「柔道整復師の施術に係る療養費について」の一部改正について
- 📄 保医発0601第3号:「柔道整復師の施術に係る療養費について(通知)」の一部改正について
- 📄 保発0601第4号:「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準」の一部改正について
- 📄 保発0601第5号:「柔道整復師の施術に係る療養費について」の一部改正について
👉 厚生労働省 公式行政資料:厚生労働省ホームページ 柔道整復師の施術に係る療養費の改定等について
💡【令和8年度 柔道整復療養費改定】この記事の結論まとめ
- 新たな客観的定量基準: 「令和9年1月以降、前月までの連続する12か月間に通算8か月以上かつ9部位以上」の施術を受けている患者が保険者の確認対象に追加。
- 直ちに強制変更ではない: 基準に該当したからといって即座に変更されるわけではなく、段階的な注意喚起通知や事実確認を経て保険者が個別に判断。
- 一発アウトの厳格ペナルティ: 「自己施術」に関しては事前予告をスキップし、一撃で受領委任が中止される即時変更ルールが明文化。
- 現場が取るべき実務対策: 家族やスタッフへの「自家施術」も保険対象外。窓口での丁寧なカウンセリング体制と一分の隙もない施術録(カルテ)の整備が必須。
柔道整復療養費の適正化に向けた網羅的な構造改革が進む中、実務上最も警戒すべき新制度が「患者ごとの償還払いへの変更手続き」における新たな定量的基準の追加です。
令和8年7月1日から施行される「2部位目からの後療料等の費用逓減(80%算定)」に続き、異なる負傷の同時・断続的な多部位請求に対するチェックの目はかつてないほど厳格化しています。
本記事では、厚生労働省発出の通知に基づき、令和9(2027)年1月請求分から確認が開始される新基準「直近12か月・通算8月・9部位」の正確な計算ロジックから、通知が届く実務ルート、電磁的記録保存(タブレット等での画面署名)の活用法、そして明文化された「自己・自家施術の支給対象外化」への現場対応まで徹底的に解説します。
実務フローの解説に先立ち、接骨院・整骨院の請求業務の根観に関わる2つの支給方法の違いを再確認します。
受領委任(通常の窓口運用): 患者が施術特例の申請書に署名(サイン)することで保険給付分の請求権を柔道整復師に委任し、窓口では1〜3割の一部負担金のみを支払う仕組みです。
償還払い(強制変更後の運用): 患者が接骨院の窓口で一度施術費用の全額(10割)を自己負担して支払い、その後、患者自身が保険者へ申請書や領収証を提出して、保険給付分(7〜9割)を現金で払い戻してもらう極めて厳格な支給方法です。
| 項目 | 受領委任(原則) | 償還払い(強制変更後) |
|---|---|---|
| 窓口での支払額 | 一部負担金(1〜3割)のみ | 施術費用の全額(10割) |
| 患者の手続き義務 | 支給申請書への署名のみ | 自身で保険者へ申請書・領収証を提出 |
| 接骨院の経営リスク | 低い(通常の請求フロー) | 高い(手続き負担による患者の離脱) |
一度償還払いに変更されると、患者の手続き負担や窓口での一時的な金銭負担が大幅に増えるため、実質的にリピート通院の断念(患者離れ)に直結する経営上の最大リスクとなります。
『【保発0601第5号】受領委任通知』2ページ「第9章 46 (4)」
通知に書かれていることの要約: 償還払いに切り替わった患者さんに対しては、「窓口でいったん施術料金を全額(10割)支払ってもらった上で、患者さん自身が保険者へお金の払い戻しを申請するように伝えてください」というルールが定められています。
長期かつ頻回、そして断続的に複数部位の請求が続いている患者に対し、受領委任を中止して償還払いへ切り替えるための定量的な基準が以下のように追加されました。
実務者が最も誤認しやすいのが「1年間」という対象期間の解釈です。「当年1月〜12月」といった暦年(固定された1年間)での計算ではありません。
正しい計算ロジック: 「令和9年1月以降において、前月までの連続する12か月の間」と明記されています。
例えば、令和9年1月に保険者等によって最初のスクリーニング判定が行われる際、参照されるのは令和8年1日から12月までの直近12か月間です。以降は毎月、判定月から見た「直近12か月」が1か月ずつ移動しながら通算計算されます。
・1月審査対象 ──→ 過去の期間:令和8年1月 ~ 令和8年12月
・2月審査対象 ──→ 過去の期間:令和8年2月 ~ 令和9年1月
・3月審査対象 ──→ 過去の期間:令和8年3月 ~ 令和9年2月
※この「直近12か月」の中で【通算8か月以上、かつ通算9部位以上】の施術があると対象となります。
この新基準において実務者が最も見落としやすいのが、9部位の具体的な数え方です。解釈の方法を誤ると運用に大きな問題が発生するため注意してください。
① 12か月間の「累積新規負傷部位数」がすべて加算される
この基準は、判定月から遡った直近12か月間の参照期間内に、療養費支給申請書(レセプト)へ記載された「すべての新規負傷部位」の合計数でカウントされます。例えば、2月に2部位、5月に1部位、8月に2部位、11月に3部位の新規負傷をそれぞれ請求した場合、一見すると毎月のレセプト上の同時部位数は少なく抑えられているように見えます。
電算審査による過去12か月間の累積合計は 2 + 1 + 2 + 3 = 8部位 となり、翌月にさらにもう1部位でも新規負傷が追加されれば、その時点で通算9部位に達して注意喚起の対象となります。
② 「治癒」した部位と「継続」している部位の数え方の違い
部位数の重複カウント(二重計上)を防ぐための実務上のロジックは以下の通りです。
- 継続部位: ある負傷名が3か月間「継続」してレセプトに記載されていても、新規発生ではないため、累積マスターへは最初の初検月に「1部位」としてカウントされるのみです。
- 再負傷(再初検・再検料スタート): 一度「治癒」とした後、別原因で同名部位を再負傷して再度請求を立てた場合(または3月ルール適用で再検料から開始した場合)、健康保険上は「新たな新規部位(通算2部位分)」として累積加算されます。
令和8年7月の2部位目逓減(80%)導入は、多部位施術の請求状況をより詳細に把握する仕組みの一環として位置付けられている可能性があります。療養費支給申請書の電算化に伴う多部位請求の傾向をデジタルデータで完全に捕捉し、過去の請求状況が継続的に確認される仕組みとなっています。
この「8月・9部位」のスクリーニング基準を満たしたレセプトを発行している患者は、療養費支給の適正化の観点から、各都道府県の柔道整復審査委員会における「重点審査対象(要確認項目)」へと機械的に位置づけられます。負傷原因の妥当性や施術録との整合性が極めて厳しくチェックされるため、曖昧な理由での長期・多部位請求は返戻確率を飛躍的に高めることになります。
『【保発0601第5号】受領委任通知』1ページ「第9章 46 (2) ④」
通知に書かれていることの要約: 「令和9年1月以降から数えて、前月までの1年間のうちに、合計8か月以上かつ9部位以上について施術を受けた記録がある長期の患者さん」をチェック対象として自動的に抽出する仕組みが始まります。
基準に該当したからといって、ある日突然、前触れもなく償還払いに強制変更されるわけではありません。段階的な手続き(ステップ)がルール化されています。
保険者が該当患者を抽出した際、まず最初に発出されるのが「償還払い注意喚起通知(被保険者用:様式第9号 / 施術管理者用:様式第9号の2)」です。
① 公益社団法人会員(協定)の場合: 保険者等から、審査支払機関である「丙(国保連合会や社会保険診療報酬支払基金など)」を経由して、患者および施術管理者の双方に対して同時に送付されます。
② 個人請求・非会員(契約)の場合: 地方厚生(支)局および都道府県知事との「個人契約(確約書提出)」に基づき請求を行っているため、一部の保険者においては丙(審査支払機関)を挟まず、保険者から直接、あるいは厚生局の指導ライン等を通じて通知が届く実務パターンが存在します。
いずれのルートであっても、保険者等による公的機関や受領委任の統括官庁を巻き込んだ公式な通知であるため、接骨院側は「保険者からの単なる個別照会やアンケート」と同列に扱ってはなりません。
注意喚起通知(様式第9号)が届いた月の翌月以降にも、受療状況に改善が見られず同様の多部位・長期請求が繰り返された場合、事実関係を精査するための第2ステップ(強力な個別調査)へ移行します。
対面調査の義務化: 保険者は、単に手紙を郵送するだけの文書照会に留まりません。「電話又は面会(対面ヒアリング)」により、患者本人に対してダイレクトに強力な調査を試みます。
ヒアリングの内容: 患者に対し、「本当にその回数、その傷病名で間違いなく通院しているか」「具体的にどのような施術を受けたか」「ケガをした明確な原因(いつ・どこで・どうやって痛めたか)を今も覚えているか」等の詳細な説明を直接求めます。
上記の文書・対面調査の結果、療養費の適正な支給の観点から、これ以上受領委任の形(窓口3割負担等)を認められず、個別に施術の必要性を毎月確認せざるを得ないと保険者が判断した場合、最終通告である「償還払い変更通知(様式第10号 / 様式第10号の2)」が送付されます。
受領委任の中止: 通知が到着した月の翌月以降、当該患者に係る受領委任の取扱いは完全に中止(拒否)されます。
窓口実務の激変: 該当患者がそれ以降も来院する場合、接骨院の窓口では「施術料金の全額(10割)」を現金で徴収しなければなりません。その上で、施術内容や証明を記載した償還払い用の支給申請書を患者に手交し、患者自身が保険者に療養費を請求するよう指導する義務が生じます。
『【保発0601第5号】受領委任通知』1〜2ページ「第9章 46 (2)・(3)・(4)」
┗ 通知に書かれていることの要約: 保険者が審査支払機関である「丙(へい)」を通じて注意喚起や変更の手続きを進めるためのルートや、書面だけでなく「電話や対面ヒアリング」で本人確認を行う詳細な調査ルールが明確化されています。
『【保発0601第5号】受領委任通知』6~9ページ(各種新様式)
┗ 通知に書かれていることの要約: 事前警告となる「様式第9号(注意喚起通知)」と、最終決定となる「様式第10号(変更通知)」のフォーマット用紙の公式な雛形が規定されています。
今回の適正化改定において、「8月・9部位」の多部位請求よりもさらに厳しいペナルティ措置が敷かれ、健康保険の支給対象外(不支給)であることが明確に規程された行為が2つあります。
柔道整復師が、自分自身に対して行った施術に係る療える費請求は完全に不支給(支給対象外)となります。
【最重要】即時変更ルール(注意喚起のスキップ): 多部位患者(8月9部位)や後述の自家施術の場合は、変更の前に必ず「注意喚起通知」というステップを挟む必要があります。しかし、「自己施術」に関しては、保険者はこれらの予告手続きを一切経ることなく、一発で「償還払い変更通知(様式第10号)」を送り、即座に受領委任を中止できるという強力な即時ペナルティ規定が設けられています。
柔道整復師による「自身の家族(親族)への施術 Foro」、および「自身が所属・関連する施術所の開設者、ならびに共にはたらく従業員(スタッフ)に対する施術」を繰り返し受けている患者についても、同様に健康保険の支給対象外に指定されました。これらは身内同士による架空請求や頻回請求の温床になりやすいとして、一連の適正化の網によって完全に退路を断たれた形となります。
ここで誤認してはならないのは、「家族やスタッフへの施術行為そのものが違法・禁止になったわけではない」という点です。あくまで「健康保険(療養費)の請求をしてはならない営業」という不支給ルールです。
正しい実務対策: 自院のスタッフが業務中やプライベートで負傷し、院内で処置・施術を行う場合は、「完全な自費診療(窓口10割全額自己負担)」として処理するか、あるいは「近ラインの完全に資本・雇用の独立した他院(接骨院や整形外科)を紹介して受診してもらう」という選択肢が正確かつクリーンな実務対策となります。もし院内で自費診療として受託する場合も、保険請求カルテと完全に区分し、自由診療の施術録として適切な管理を行うことで、後の監査や突合調査におけるリスクを未然に防ぐことができます。
『【保医発0601第1号】算定基準の実施上の留意事項について』1ページ「第1 通則 13・14」
┗ 通知に書かれていることの要約: 「施術者自身のケガの治療(自己施術)」、および「自分の家族や、治療院のオーナー、一緒に働くスタッフへの治療(自家施術)」は、健康保険の払い戻し対象には含まれないことがはっきりと明文化されています。
『【保発0601第5号】受領委任通知』2ページ「第9章 46 (5) 」
┗ 通知に書かれていることの要約: 柔整師が自分自身への保険請求(自己施術)を行った場合は、事前警告の通知ステップを一切挟まず、即時に「10割全額自己負担(受領委任中止)」に変更できる特例ルールが敷かれています。
もし万が一、保険者等を通じて院内に「償還払い注意喚起通知(様式第9号の2)」が届いてしまった場合、感情的な対応や放置は最悪の結果(10割償還払いへの強制移行)を招きます。
- 事実の共有と安心感の提示: 「〇〇さん、健康保険の新しいルールで、1年間にたくさんの部位を続けて治療している方に、このような確認の手紙(注意喚起)が届く仕組みになりました。〇〇さんが悪いわけではないので安心してくださいね」と、患者が不信感を抱かないよう制度の仕組みを説明します。
- 正確な施術録の整備: 保険者からの「電話・対面照会」がいつ患者に及んでもいいよう、負傷原因、日々の経過、検法の記録(関節可動域や疼痛テストの結果)を施術録(カルテ)に詳細に書き込み、一分の隙もない状態を作ります。
新点数の移行および再検料特例・3月ルールの運用にあたって、現場から想定される実務の疑問点をまとめました。
Q1:令和9年1月確認開始の「直近12か月」とは、具体的にどこの期間ですか?
Q2:スタッフの家族(例:受付スタッフの子供)への施術も「自家施術」として不支給の対象になりますか?
Q3:自己施術をしてしまい償還払いに変更された場合、その施術所全体で受領委任が使えなくなりますか?
Q4:注意喚起通知(様式第9号)が届いた患者が、翌月に1部位のみの請求に減少した場合、償還払いへの移行は回避できますか?
Q5:一度「償還払い(10割徴収)」に変更されてしまった患者は、一生そのまま受領委任に戻すことはできないのでしょうか?
『【保発0601第5号】受領委任通知』2~3ページ「第9章 51」
通知に書かれていることの要約: 全額負担(償還払い)に変更されてしまったケースでも、その後の通院状況が適切に見直されたことが確認できれば、元の負担割合(窓口での受領委任)に安全に復帰させることができる再開通知の手続き要件が明示されています。
今回の改定は、料金のデジタル管理から患者への書面交付ルール、長期患者の管理にいたるまで、多岐にわたる実務の見直しが必要です。当サイトでは、各重要トピックを専門的に深掘りした「詳細解説記事」をご用意しています。実務上の疑問解決にぜひお役立てください。
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【令和9年1月施行】償還払い強制変更の新基準「1年間・8月・9部位」とは?自家施術の不支給化と患者へのカウンセリング対策
令和8年改定への不安や、今後の院運営に関するお悩みに応じて最適な窓口をご利用ください。
保険請求・療養費制度サポート
✅ 令和8年7月療養費改定の疑義解釈
✅ 2部位目逓減や負傷原因の記載実務
✅ 窓口ごと明細書発行加算への対応
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