【令和8年度】柔道整復療養費改定の全容|料金変更点と接骨院経営への影響まとめ
現在、厚生労働省の専門部会において、令和8年度(2026年度)の柔道整復療養費改定に向けた具体的な議論が進められています。本記事では、接骨院・整骨院の経営者やレセプト担当者の皆様が最も気になる「料金の変更点」「施行時期」「売上への影響」などの実務情報を最速でわかりやすく解説します。
この記事の要点(サマリー)
- 施行時期: 令和8年(2026年)7月1日施行予定(※医科の診療報酬プラス3.09%改定に連動)
- 主な変更点: 初検料・再検料・後療料の引き上げの一方、2部位目の逓減や明細書への負傷名記載などを議論
- 経営への影響: 正しい請求を行う院にはプラス、不自然な「部位転がし」を行う院は厳格に淘汰される方針
本記事の目次
1. 令和8年度 柔道整復療養費改定の概要と施行時期
令和8年度の改定は、病院・クリニック側の診療報酬改定(プラス3.09%の引き上げ※2年度平均)に伴う、物価高騰・医療従事者の賃上げ対応と連動する形で話し合いが進められています。
現時点での施行時期は令和8年(2026年)7月1日が予定されています。今回の改定のポイントは、現場のやり繰りへの配慮として一部の基本料金が引き上げられる一方で、請求の「適正化・透明化」へのハードルがさらに高くなる点にあります。
2. 主な料金改定(案)一覧表
以下は、今回の改定議論において提示されている主な料金改定(案)の比較表です。
| 項目 | 旧料金 | 新料金(案) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 初検料 | 1,550円 | 1,560円 | +10円 |
| 再検料 | 410円 | 420円 | +10円 |
| 後療料 | 505円 | 550円 | +45円 |
※上記点数は議論中の改定案に基づくシミュレーション値であり、最終確定時に微調整される可能性があります。
3. 算定ルールの変更点(初検料・再検料・後療料)
単なる基本料金の引き上げだけでなく、算定のルール自体にも見直しが入っています。
- 初検料・再検料の見直しと「歴月」の考え方: 基本点数の引き上げが行われる一方、月をまたいだ際(歴月)の再検料算定のタイミングや回数制限の厳格化について、医科のルールに準じた適正化が図られます。
- 後療料引き上げと2部位目逓減の導入: 単一部位の後療料は引き上げられますが、多部位請求に対する風当たりは強く、「2部位目以降の後療料に新たな逓減(引き下げ)を導入すべき」という案が議論されています。多部位請求の多い院にとっては、シミュレーション次第で売上減少の要因となる可能性があります。
4. 明細書発行加算の変更点と現場対応
現在、国のデータによると施術所の95.4%がすでに明細書を出せるレセコンを導入していることが判明しています。これを受けて、明細書の交付ルールはさらに一歩進みます。
具体的には、領収明細書に単なる金額だけでなく、患者様の「負傷名(ケガの名前)」を義務付けるべきかが議論されています。これが義務化されると、患者様自身が「自分が今、どの部位のケガで保険請求されているか」をリアルタイムに把握できるようになります。レセプト担当者は、システムアップデートへの対応と、患者様へ嘘偽りのない負傷名をしっかりと説明できる体制を整える必要があります。
5. 長期・多部位患者への影響と「部位転がし」取り締まり
今回の改定議論において、健保組合等の保険者側から最も厳しい意見が出ているのが「部位転がし」への対策です。
※接骨院の現場における「部位転がし」とは?
同じ痛みの原因(慢性の腰痛など)が続いているだけなのに、通院期間が長くなって料金が下がる(長期減額ルール)のを防ぐため、請求する負傷部位を次々に変え、あたかも新しいケガが連続して起きたかのように見せかけて高い点数を請求し続ける行為。
厚生労働省は「何をもって部位転がしとするか」の明確な定義を決定する方針です。今後は部位の変更に対して、「なぜそのケガが起きたのか」「前の負傷との因果関係」といった、第三者が納得できる理由のカルテ記載がこれまで以上に厳しくチェックされます。
また、不自然な長期・頻回通院(5か月超・月10回以上など)を続ける患者に対しては、保険者から注意喚起通知が届くだけでなく、電話や対面での「面接確認・説明要請」が実施され、最終的に窓口で保険が使えなくなる「償還払い(窓口10割負担)」へ変更させる手続きが厳格化されます。
6. 今回の改定背景:令和6年度改定の振り返りと傷病名データの現実
なぜ国や保険者はここまでチェックを厳しくするのでしょうか。その理由は、直近である令和6年度(2024年)改定の流れと、厚労省が突きつける「厳しいデータ」を見れば明らかです。
① 令和6年度料金改定で打たれた「布石」
前回の改定では、「レセコン導入院への明細書無料発行の義務化」や、「初検から5か月超・月10回以上の通院における後療料等の50%減額ルール」が新設されました。今回の令和8年度改定は、この時に残された「さらなる適正化」の課題を地続きで実行しているに過ぎません。
② データが物語る「捻挫・打撲が99%」という不自然さ
厚労省の会議資料(抽出調査)では、接骨院の請求申請書における傷病名の内訳が提示されています。
- 捻挫: 64.02%
- 打撲(挫傷含む): 35.84% (※この2つだけで全体の99.86%)
- 骨折・脱臼: 骨折 0.11% / 脱臼 0.02%(ほとんど算定されていない)
- メインの患者層: 70〜79歳が19.3%と最も高い
このデータを見た保険者側は、「高齢者が年齢による慢性の肩こりや腰痛で通っているのを、捻挫や打撲に名前をすり替えて保険請求(部位転がし)しているのではないか」という強い疑いを持っています。これが、現在の厳しい締め付けの根本的な原因です。
7. まとめ&よくある質問(FAQ)
制度が厳しくなるということは、裏を返せば「真面目に、誠実に、高い技術を持って運営している院が正当に評価され、ルールを無視する院が淘汰されるチャンス」でもあります。
これからの時代を生き残るためには、第三者が見ても納得できるクリーンなカルテ・請求書の作成と、保険適用の範囲(急性)と自費メニュー(慢性・骨盤矯正など)の完全な切り分けが不可欠です。
💡 令和8年度改定に関するよくある質問
Q. 令和8年度の柔道整復療養費改定はいつから施行されますか?
A. 現時点では、令和8年(2026年)7月1日施行の予定で議論が進められています。
Q. 初検料や後療料の料金はいくらになりますか?
A. 改定案によると、初検料は1,550円から1,560円(+10円)、後療料は505円から550円(+45円)へ引き上げられる見込みです。ただし、2部位目以降の後療料に逓減ルールが導入される可能性があります。
Q. 接骨院の「部位転がし」対策とは具体的に何ですか?
A. 長期通院による減額を避けるため、不自然に負傷部位を変更して請求し続ける行為への取り締まりです。今後は「なぜその部位が変わったのか」の明確な負傷原因の確認と、詳細なカルテ記録・説明義務がこれまで以上に厳格化されます。
【厚生労働省 公式検討会資料(PDF)】
