JBA協会ブログ

2026年07月02日

施設訪問は大幅減収へ|あはき療養費「訪問施術料の新区分」と「集中率80%減算」を徹底解説

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【令和8年7月施行】あはき療養費「訪問施術の新区分」と「特定施設への集中減算(80%)」対策ガイド

令和8年(2026年)7月1日施行のあはき(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう)療養費改定において、「月16回以降の50%逓減制」と並んで業界に激震をもたらしているのが、訪問施術料の区分見直しと「集中率による減算(80%算定)」ルールの新設です。

老人ホームなどの介護施設をメインに、大人数を一度に施術するビジネスモデル(いわゆる施設への囲い込み)に対して、国から極めて厳しい適正化のメスが入りました。

本記事では、新設された訪問施術料の「区分4・区分5」の料金詳細から、特定施設への「集中率90%以上」で適用される減算ルール、そして実務で必須となる「訪問施術総括表」の作成まで、現場が直面する変更点を網羅して解説します。

【本記事の根拠となる通知一覧】

👉 厚生労働省 公式行政資料:厚生労働省ホームページ はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の改定等について

🔍 今回の改定の「全体像」をチェック
新旧料金比較表、50%逓減、施設集中減算、訪問区分細分化など、令和8年7月療養費改定のすべての変更点と重要トピックスを網羅した総まとめ記事です。まずはこの記事から全体の流れを把握することをおすすめします。
1. 制度の概要:なぜ「施設囲い込み」が厳格化されたのか?

これまでも訪問施術料は「1人」「2人」「3人以上(マッサージは10人以上の規定あり)」といった人数別の区分があり、同一建物で施術する人数が多いほど単価が下がる仕組みでした。
しかし、今回の改定では、特定の施設に依存して「1日に数十人をまとめて施術し、効率的に多額の療養費を請求する」ビジネスモデルへの適正化が図られました。

💡 国が適正化に踏み切った背景

「特定の同一施設で集中的に施術が行われているのであれば、移動にかかるコストや手間が大幅に削減されているはずであり、その効率化された分は療養費の引き下げ(減算)として反映すべきである」という方針のもと、人数のさらなる細分化(区分4・区分5の新設)と、施設への依存度(集中率9割以上)に応じた「80%減算ルール」が導入されることになりました。

2. 【変更点①】訪問施術料が「5区分」に細分化

同一日・同一建物で施術を行った患者数に応じて、従来の区分が見直されました。
今回の改定では、大人数向けの「訪問施術料4(10人~19人)」と「訪問施術料5(20人以上)」が新設され、合計5つの区分に細分化されています。

🔴 はり・きゅうの新しい訪問施術料(1回あたり・1術の場合)

既存の区分1〜3でもベースアップ(各+40円)が行われた上で、大人数区分が新設されています。

  • 訪問施術料1(1人の場合):3,950円
  • 訪問施術料2(2人の場合):2,800円
  • 訪問施術料3(3~9人の場合):2,110円
  • 【新設】訪問施術料4(10~19人の場合):1,800円
  • 【新設】訪問施術料5(20人以上の場合):1,720円
🔵 あん摩マッサージ指圧の新しい訪問施術料(1回あたり)

マッサージは従来の「10人以上」という一律区分が廃止され、10〜19人と20人以上の2つに完全に分離されました。

  • 【新設】訪問施術料4(10~19人の場合):1局所 620円 ~ 5局所 2,500円
    (内訳:1局所 620円、2局所 1,090円、3局所 1,560円、4局所 2,030円、5局所 2,500円)
  • 【新設】訪問施術料5(20人以上の場合):1局所 540円 ~ 5局所 2,420円
    (内訳:1局所 540円、2局所 1,010円、3局所 1,480円、4局所 1,950円、5局所 2,420円)

⚠️ 実務担当者が絶対に知っておくべき算定ルール

この訪問区分は、「同一日・同一建物で施術を行った合計人数」によって判定されます。
例えば、ある有料老人ホームにおいて、同日に午前3人・午後7人の合計10人を施術した場合、その日の全員分のレセプトにおいて「訪問施術料4(10人〜19人)」を適用する必要があります。人数のカウントミスは返戻(へんれい)に直結するため、日々の施術記録の徹底管理が不可欠です。

💡 出張専門施術者の「通所算定」の罠に注意

出張専門の施術者が訪問施術料を算定せず、来院扱いの「通所の施術料」としてレセプト請求を行う場合であっても、同一日に同一建物で大人数を施術している実態がある場合は、その通所患者の人数も含めて全体の区分判定(人数のカウント)を行う必要があります。これを「訪問施術料がかからないから関係ない」と除外してカウントすることは不正な請求とみなされるリスクがあるため、厳重にご注意ください。

3. 【変更点②】同一施設に依存すると「全額80%」に減額(集中減算ルール)

今回の改定において施設訪問メインの施術所が最も警戒すべきなのが、新たに導入された「集中率による80%減額」ルールです。以下の条件をすべて満たす場合、その施設における施術報酬が大幅にカットされることになります。

🚨 集中減算(80%算定)の適用要件と内容

対象となる院: 同一月内に、新設された「訪問施術料4」または「訪問施術料5」を1回でも算定している施術所。
適用条件(集中率): 当該月における院全体の「訪問施術の総算定回数」のうち、特定の同一施設等において行われた施術の割合(集中率)が「90%以上」を占めていること。
減算される内容: 当該月のその施設における訪問施術の料金すべて(基本の施術料や各種加算を含む一連の全ての料金)を「100分の80(20%減算)」として算定する。

💡 実務上の解釈と経営リスク

分かりやすく言えば、「当院の訪問患者様のほとんどが、特定の提携先であるA老人ホームの入居者様である」といった一極依存型の運用を行っている場合、A老人ホームの全員分の施術報酬が丸ごと2割カットされることになります。
この集中率の計算には、前述の通り「訪問施術料を算定せず通所の施術料を算定した出張専門施術者」の施術回数も分母・分子に含まれるため、抜け道はありません。該当するリスクがある院は、集客チャネルの分散化や提携施設の拡大など、ビジネスモデル自体の見直しを迫られる極めて厳しいルールとなっています。

4. 要注意!出張専門施術者の「通所算定」も集中率の計算対象に

「訪問施術料を請求しなければ、集中率の計算(減算ルール)を逃れられるのでは?」と考える方がいるかもしれませんが、今回の改定でその抜け穴は完全に塞がれました。

🔴 「実際に訪問しているのに通所算定」は原則不可に

今回の改定により、「実際に患者の自宅や施設へ訪問して施術を行っているにもかかわらず、訪問施術料を算定せずに(通所扱いとして)施術料のみを算定すること」は原則として認められないことが明確化されました。

🔵 出張専門施術者の例外ルールと「集中率」の罠

ただし、店舗(施術所)を持たずに往療のみで施術を行う「出張専門施術者」が施術を行う場合であって、医師の同意書に「訪問又は往療を必要としない(=患者は歩行可能である)」と記載されている場合に限り、訪問施術料ではなく「通所の施術料」を算定することが例外として認められています。

【公式通知上の規定(保医発0605第3号)】

📄 別添2.マッサージの施術に係る療養費の取扱いに関する留意事項等 第4章

訪問施術を行った場合には、訪問施術料を算定せずに通所による施術料を算定することはできないこと。ただし、専ら出張のみにより自ら施術を行う施術者(以下「出張専門施術者」という。)が施術を行う場合であって、同意書に「訪問又は往療を必要としない」と記載されている場合はこの限りでないこと。

しかし、ここからが今回の改定の最も注意すべきポイントです。出張専門の施術者が、この例外規定を使って訪問施術料を算定せずに「施術料(通所扱い)」を算定している場合であっても、その施術回数は、新設された訪問施術料4・5における「施設への集中率(90%以上で20%減算)」の計算(分母・分子の双方)に必ず含めなければならないというルールが創設されました。

【公式通知上の規定(保発0605第8号)】

なお、出張専門の施術者が訪問施術料を算定せずに施術料を算定している場合は、当該施術料の算定回数も集中率の計算に含めること。

形式上の算定名目が「施術料(通所)」になっていたとしても、「実態として同じ施設に赴いて施術している回数」であれば、すべて集中率のカウント対象になります。

🚨 経営存続に関わる重大なペナルティリスク

万が一、この回数を除外して集中率を「89%」などと偽って通常通り100%の請求を行った場合、その後の指導・監査において「不正請求(減算逃れ)」とみなされます。これは、単なる返戻にとどまらず、療養費の返還請求や受領委任の取消処分に発展する「一発アウトの不適切事例」となります。出張専門の先生方は、このルールを絶対に甘く見ず、正確な施設訪問回数の集計を行ってください。

5. 実務上の変更:専用レセプトと「訪問施術総括表」の添付義務

施設集中減算ルールの導入に伴い、令和8年7月以降のレセプト請求業務のオペレーションも大きく変わります。以下の2点の手続きを怠ると、申請書がすべて返戻(へんれい)扱いとなりますので、請求担当者は必ず業務フローを更新してください。

🔴 ① 減算対象・区分4・5専用の「新様式レセプト」を使用すること

「訪問施術料4」または「5」を算定する患者様の療養費支給申請書(レセプト)は、従来の通常の様式ではなく、区分4・5専用に新設された様式(別紙4の3など)を使用して請求する必要があります。
※システム改修が間に合わない施行初期の経過措置(当分の間の猶予)として、旧様式を修正(取り繕って)使用することは認められています。

🔵 ② 「訪問施術総括表(別紙7)」の添付義務化

訪問施術料4、または5を算定して療養費を請求する場合、支給申請書に「訪問施術総括表(はり・きゅう用/あん摩・マッサージ用)」を添付することが義務付けられました。

【公式通知上の規定(保医発0605第3号)】

📄 第12章 支給事務手続き 9(はり・きゅう)

訪問施術料4又は5を算定する場合の療養費支給申請書には、別紙7の訪問施術総括表(はり・きゅう)を添付する取扱とすること。

📄 第11章 支給事務手続き 8(あん摩・マッサージ)

訪問施術料4又は5を算定する療養費支給申請書には、別紙7の訪問施術総括表(あん摩・マッサージ)を添付する取扱いとすること。

※別添2 別紙7 を参照

この「訪問施術総括表」は、請求先の保険者等ごとに各1枚ずつ作成して添付する必要があります。総括表には、主に以下の内容を正確に算出して記入しなければなりません。

  • 訪問先の施設等の名称
  • 施設ごとの「のべ施術回数(算定回数)」や「施術日数」
  • 同一日における訪問施術人数の平均値
    (※平均人数は四捨五入により小数点第1桁まで記載)
  • 当該月における施設への依存度を示す「集中率(%)」

⚠️ 添付を忘れると返戻の対象に

この「訪問施術総括表」の添付は、集中率が90%未満(減算なし)の施術所であっても、訪問施術料4または5を算定している場合は一律で提出が必要です。
「うちは集中率が80%だから添付しなくていいや」と思い込んでレセプト単体で提出してしまうと、添付書類不備として審査を通過できず、施術所に戻されてしまいます。7月施術分(8月請求)以降、新しい専用総括表が出力・連動できるよう、お使いのレセコンメーカーのプログラム更新状況を必ず事前にチェックしておいてください。

6. 施設集中減算への今後の対策

令和8年7月以降、1つの大規模施設(サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなど)に依存した経営モデルは、大幅な減収または「不支給」という極めて高いリスクを伴います。該当する施術所が直ちにとるべき対策は、主に以下の2つです。

🟢 ① 在宅(個人宅)へのアプローチを強化し、集中率を89%以下に下げる

特定の施設への依存度が90%以上になると、訪問施術料4・5における「80%減算」が適用され、その施設での売上が一律2割カットされてしまいます。これを回避するためには、居宅(個人宅)で療養されている患者様への訪問マッサージ・鍼灸の新規集客を強化しなければなりません。分母となる全体の訪問回数を増やし、特定の施設への訪問割合を「90%未満」へと引き下げることで、減算対象から外れる健全な事業構造へと早期にシフトすることが重要です。

🔴 ② 不適切な紹介ルートの即時見直し(利益供与・特別の関係の禁止)

今回の改定において、集中減算(2割減)よりも恐ろしいのが、ルール違反による「療養費の全額不支給(支給対象外)」の規定です。現在の営業手法や契約内容に以下の違法リスクがないか、直ちに点検・見直しを行ってください。

  • 紹介料(キックバック)の絶対禁止
    高齢者施設、ケアマネージャー、請求代行事業者、医療機関などに対し、「紹介料」「事務手数料」「業務委託費」など名目を問わず、金品(経済上の利益)を提供して患者の紹介を受ける行為は、その結果なされた施術のすべてが「療養費の支給対象外」となります。
  • 「特別の関係」にある施設での施術制限
    施術所と訪問先の施設(設置運営会社など)が「特別の関係」にあり、実質的に入居者が他の施術所を自由に選択できない状態になっている場合、その施設への訪問施術はすべて療養費の支給対象外となります。
    ※「特別の関係」とは、開設者・代表者が同一である場合、代表者の親族である場合、フランチャイズ契約や経営コンサルタント委託関係にある場合など、広範にわたる財務・営業上の緊密な関係を含みます。

🚨 グレーゾーンから「明確な一発アウト」へ厳格化

利益供与(紹介料の支払いなど)や特別の関係による囲い込みは、今回の改定によって「グレーゾーン」から「明確な一発アウト(不支給・不正)」へと厳格化されました。

これらは、今後の指導・監査における最重点の調査項目となります。「過去からの契約だから」と放置せず、外部の紹介事業者や施設との間で交わしている契約書、金銭の授受関係を今すぐリーガルチェックし、適正な運用へ是正してください。

【詳細解説】あはき療養費改定の重要テーマ別記事

令和8年(2026年)7月のあはき療養費改定に関するより詳細な情報や、実務上の具体的な対策については、以下のテーマ別解説記事をご覧ください。ご自身の院の運用に直結する項目は、必ず詳細を確認して返戻や減算リスクを防ぎましょう。


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