はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧 取り締まり厳格化か?
マッサージやはり・きゅう治療の不正請求問題に絡み、愛知県で訪問マッサージ治療院を運営する「MRC」(名古屋市、2016年6月解散)が治療費に当たる「療養費」を過大に受給したとして、同県後期高齢者医療広域連合が約2億8千万円の返還を求めたことが2017年2月7日、広域連合などへの取材で分かった。出張料に当たる「往療料」や、施術者数が実際より多かった。
厚生労働省は2017年1月、全国の総額で約9億5千万円の不正受給があったと公表。同社は「事務処理の誤り」と説明したため、厚労省の総額に含まなかったが、事実上の水増しで不正受給の広がりが示された形だ。
MRC社は2010年3月開業。マッサージ師21人を雇い、後期高齢者の自宅や介護施設などでの訪問マッサージなどの施術に従事させていたとしているが、施術師の人数を実際より多く記入したり訪問先への距離を本来より遠く算定したりして、おもに「往療料」を過大に加算請求するなどの不正受給を繰り返してきたとされる。
同社は2010年3月からの5年半の間で総額約8億9,000万円の療養費を請求受給。今回このうち返還を求めたのは2015年9月に支給した1,704万1,582円のうち、過大受給が明らかな1,550万790円の分。県広域連合給付課としては今後、2010年の治療院開設時にさかのぼってさらに調べ、詐欺罪もしくは文書偽造の容疑での刑事告訴も視野にいれつつ、愛知県警などと協議相談しつつ裁判手続きに入ることを検討するとしている。
今回の不正発覚のキッカケは2015年秋、MRCからの療養費支給申請書(2015年10月分)を県広域連合が点検した際、一人の施術師が1ヵ月に59人もの訪問施術をしたことになっていたほか、特別養護老人ホームに入所している被保険者に対する施術場所に自宅住所が記載されているなど不可解な記載が判明したことにあった。その後、MRCの篠田社長や施術師、さらに特別養護老人ホームなどを対象に詳細に調べていくなかで、一連の過誤記載に伴う不正受給が次々と明るみに出ていった。
これまで県広域連合では申請書の訂正など自主的な対応を求めるなど指導してきたが、MRC側は2016年1月7日になって治療院の廃止届を一斉に提出するなど応じる気配がないと判断し、このたび返還請求に踏み切り、裁判手続きに入る決断をしたと思われる。
以下、今回処分における過誤記載の内容などの詳細は次のとおり。
(1)介護施設等に入所している被保険者に対し、被保険者の自宅を施術場所として、往療料が請求されていた。
(2)介護施設等において一人の施術師が複数の被保険者に対し連続して施術を行なった場合に、複数の被保険者それぞれに往療料が請求されていた。
(3)施術を行なった施術師と異なる施術師名で保険請求がされていた。
(4)保健所に届け出た施術所または施術師(往療専門の場合)の所在地とは異なる場所から行なった施術について保険請求がされていた。
(5)一部施設に入所する被保険者について本人負担を1回100円とし、法定の負担割合に基づく金額が徴収されていない施術について保険請求がされていた。
この事件がきっかけとなり、愛知県後期高齢者医療広域連合では、はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧療養費の代理受領の取り扱い等に関する事務取扱要領が制定されるようだ。
詳細は下記リンク先に記載。